2022815

ワクチン接種済みの豚に対する殺処分の中止を!

   ピッグスペシャリスト 山下哲生

 

終戦の日であるからこそ 声をあげる!!

今年723日に栃木那須烏山で豚熱が発症してから21日以上たった。発症確認後21日隔離観察をへて発症が無ければ、家畜伝染病予防法第14条で隔離移動制限は解除されるはずである。これから1カ月以上もかかり、まだ半数の28千頭近くいるワクチン接種豚に対する意味のない殺処分はただちに、中止するべきである!!

 

76例目の丸森からワクチン接種済みでも、丸森で発症確認の1カ月前に農場外に出荷された種豚、子豚、さらには丸森で採精製造された人工授精の精液で受精された他農場の種雌豚も家畜伝染病予防法の発症農場の豚である=患畜、擬似患畜とされ、移動先で殺処分されている。

法律上では「患畜、擬似患畜のいる農場の家畜は擬似患畜とされ」これが、現在発症、感染が報告されていないのにも関わらず発生農場での意味の無い殺処分の根拠と継続につながっている。導入農場でも全頭殺処分対象となるべきところだが、「受け入れ農場の豚がワクチン接種済み」であるからという、苦しい「方便」で28日の観察後、これら丸森からの導入をした農場では隔離解除して通常通りの生産を維持している。

 なぜ、発生農場でワクチン接種済みで殺処分しなければならないかという率直な疑問に対し、新聞でのインタビューで前農林水産大臣が次のように述べている。

 金子原二郎(かねこげんじろう)農相は726日の記者会見で、「ワクチンは発症を防ぐものであり、感染を防ぐものではない」と強調。同省の担当者は「抗体価の確認にも時間はかかる。防疫措置は速やかに進める必要がある」と全頭処分の意義を唱えた。(下野新聞 731日「soon」ニュースより)


口蹄疫、アフリカ豚熱(
ASF)は伝染性が強くワクチンも使われていない。家畜伝染病予防法では、この2つの疾病に対しては、周辺農場も含めた予防的殺処分をもとめている。しかし、豚熱には「発症を防御することが出来る」(改訂 家畜伝染病予防法 逐条開設大成出版2022年)ワクチンがあるため、今回の83例目農場の周囲にある22農場は、規制の網に入ることはない。83例目農場は56千頭の国内有数の大農場であるが、ワクチンを打っているのでその後の発症報告は、21日たった今でも流れてこない。

また、殺処分は「感染防止のため」行う法律行為であるが、「患畜が体内に多量の病原体を保有し、その生存期間中にその病原体を周囲に拡散させること等により、家畜伝染病のまん延原因となる。」(改訂 家畜伝染病予防法)ことを防止するためである。ワクチン接種の推進、また、野生イノシシに対する経口ワクチンの散布は、体内の抗体を増加させることでウィルスの排出と発症を防止することにある。ワクチン接種が進めば、発症も防げるのに、大臣の見解は、なぜか初発農場ではワクチン接種豚でもウィルスを「強力に排出」し感染を拡げる恐れがあるからという矛盾し混乱した論理で殺処分を続行しようとしている。

また、検査が間に合わないという関係者の釈明は、重ねて、おかしな論理である。1100万件以上のPCR検査ができるようになっている現在、残り2万程度の豚のPCR検査が出来ないというのは、まつたくおかしく、殺処分に動員される労力と費用を考えれば、はるかに、手間も経費もかからないものではないだろうか?

人間に対するコロナウィルス感染症でずいぶん勉強してきているからウィルスとワクチン発症の関係でみると、ワクチンを打っていても再感染は防げない。しかし、豚熱の感染力は落ちるし、40年前に開発された豚熱ワクチンは効果抜群?!で、接種済みの豚の発病は、たまたまの、わずかなワクチンの隙間で、ウィルスの侵入を受けたものと説明されている。だからこそ、ワクチン接種100%をめざせ!!との大号令になっている。

 

 

815日は、終戦記念日である。

戦争は正常な判断を狂わせ、終わってから「反省」がでてくる。

ウクライナに対するロシアの軍事作戦の大義は「ネオナチ」の排除にある。しかし、ウクライナ国民がネオナチであるとの証拠はあげられず、ロシア内でのプロパガンダによる洗脳であることでロシアは、世界中からの「信頼と信用」を落としている。

おかしい???と思っても、これに明確に声をあげなければ共謀、共犯につながる。

「ネオナチ」のプロパガンダは、「患畜、擬似患畜、発生農場」におきかわり、「有効なワクチンで防御され発症 発病の可能性が無いにもかかわらず」根拠のない感染防御の大義名分の下、行われ続ける殺処分 この事実を抑える為か、マスコミに対する現場発の情報は、8月に入ってからはほとんど公表されてこない。暑さ対策で夜中に殺処分はなされ 全国から動員される獣医師のみが殺処分にまわり、かつアニマルウエルフェアに抵触するとされる消毒剤の動脈注射はしないという。繰り返しになるが、1頭の殺処分には10万円ほどの埋却までの直接経費がかかり、これはすべて税金が使われる。

発生から、21日隔離期間は過ぎている。その間の新たな発症報告はない。残りはワクチン接種済みの肉豚、繁殖豚と推察できる。この疑問に返事は無い。

20199月、豚熱ワクチンは、大臣の交代と同時に解禁された。前例ではなく、現場のこれ以上感染は広げるなという現場の切実な声からだ。810日に農林水産大臣も交代した。これを機に方針転換、できないなら、納得ゆく説明を強く求める。

 

行政の世界は、悪しき前例主義がまかりとおっているようである。

判断の誤りで、犠牲になるのは現場であり、指示した指導部の責任がとわれないのが、これまでの歴史の常である。ただ、このなかで殺処分される豚に対し、「日本の養豚はアニマルウエルフェアを実施している」と行政はむねをはっていえるのだろうか!返事を待ちたい。