ファット=What?=FATの時代

脂肪のことを、ファットといいます。

人類にとり、この脂肪は長い間、少なくとも第二次世界大戦後のアメリカが中心になり、家畜育成用の飼料穀物を世界中に輸出する体制になるまで、貴重なエネルギー源として重宝されてきました。

昨年コラムでも取り上げた、ファットタイプ=良質の脂肪を多く生産する豚「マンガリーカ」も、1950年代までは、非常に人気がある品種でした。これが、飽食の時代とよばれる現代になると、エネルギー源というよりは、不健康=過肥のもととして、敵視されるようになりました。その、極端を進んだのが、アメリカで、とにかく、脂肪をはずし、ロース肉でも、脂身は、すべてそぎとり(これは、0mmアンダーという整形方法です。日本では、8から10mmアンダーといって、ロース部分の背脂肪の厚みを、810mm程度にするのが、一般的です。) ヒレ肉のようにして、精肉売り場では、売られていました。

これは、脂肪摂取の過剰で、死亡原因の第一位が心臓病となっているアメリカの社会情勢を反映したものです。

アメリカの生産者団体も、「Pork is the other white meat 」という、キャンペーンに乗り出し、豚肉は、脂肪の含有率の高い「赤肉」ではなく、魚や鳥のササミのような、「白肉」である。低い脂肪の含有率=健康食品であるという、イメージキャンペーンでした。これは、アメリカの豚肉の消費拡大にある程度貢献しましたが、5年ほど前突然、このキャンペーンを弱め、むしろ、脂を増やす方向にむかっています。

あまりの、低脂肪は、肉としての風味を奪い、パサパサとした、無味乾燥な「豚肉」を作ってしまい、これが、反動を呼び消費者離れをすすめたからです。

しかし、このアメリカの消費動向が、日本をはじめ豚の世界的な規格に大きな影響を及ぼし、低脂肪=高品質=高格付け=高付加価値という流れをつくりあげてしまったといえます。もちろん、低脂肪の豚は、発育も早く、飼料要求率も良好です。しかし、極端な脂肪の排除は、豚肉の風味を失わせるのみならず、豚自体の健康をも損なうようになっていると考えられます。

 

       デンマークでのハンプシャー(低脂肪の豚の品種)の採用中止 

デンマークでは、今年からこれまで、肉豚の血液の10%程度をしめていた、ハンプシャー種の育種を中止すると発表しました。これは、PMWS やサ−コウィルスに対して、ハンプシャー種が感受性が高い(抵抗力が弱い)という現場の結果からです。(Pig international 06/12/29 配信分)

ハンプシャー種の特質は、脂肪の薄さと、赤肉量の多さで、生体重を多くしても、脂肪の乗りが、少ないので、出荷体重を大きくしているアメリカなどでは、止め雄 として、広く使われています。

これは、品種の問題というよりも、背脂肪の薄さと要求率のみを争った結果といえないでしょうか。

 

       韓国と日本での経験

韓国では、PMWS PRRS PRCD + PED を 4Pとして、これとの、闘いとしていますが、旗色は、悪く、2006年は、1母豚の出荷数で1314頭の範囲です。韓国では、アメリカと同様 脂肪の薄い要求率の良い育種に力をいれ、さらに、人工授精が急速に普及した結果、脂肪の薄い豚が多数 産出されてきました。

これが、抗病力を弱めてきているという意見がようやく出てきました。

日本でも、南九州、関東などで、肉豚を中心に事故が多発しています。

そのなかで比較的事故が出ていないのが、白豚よりは、黒豚、さらに、脂の薄いものより、ファット=脂の乗ったもの が事故の出方は、少ないと聞いています。

 

時代は、変わります。要求率の問題も、脂肪自体が持つエネルギーの高さ(赤肉の4倍)を考えれば、収支は、合うものです。良い品質の脂肪は、肉の風味と食味を改善します。

そして、豚自体の体質を改善します。

ファットな豚は、決して時代遅れのものではなく、むしろ、これからの時代を担うものと考えます。

ただし、やみくもに、ファットな豚がいいとゆうわけではありません。

適度な脂肪の乗りと、なによりも 一日増体量=デーリーゲイン の良い豚を、雄系、雌系ともに、選抜する必要があります。なぜなら、このような豚は、病気知らずの健康体だからです。

「ソルトウェイ ピーターラッド346」2005329日生まれ  過去3世代 平均離乳数8.4

2006年7月にと畜した雌のBB(180日齢)。ロース芯が太く、サシも入っている